- 1歳未満の乳児ははちみつで食中毒を起こし命に関わるため与えない
- トルコ産のはちみつの一部には毒素が含まれていることが有る
- アーユルヴェーダでははちみつは熱すると毒になると考えられている
甘くて美味しいはちみつですが、食べる年齢やはちみつの種類などで食中毒が出ることもあります。
今回ははちみつでどんな中毒が出ることがあるかについてご紹介します。
目次
乳児ボツリヌス症
はちみつの食中毒として最も注意が必要で、かつポピュラーなのが乳児ボツリヌス症です。
「はちみつは1歳未満の乳児に与えてはいけません」と色々なところで注意喚起がされていますが、その理由はこの乳児ボツリヌス症を防ぐためです。
乳児ボツリヌス症は最悪の場合命に関わる病気です。
生後1歳未満の乳児は、大人とは違い、腸内環境が整っていない状態です。
乳児がはちみつを食べると、はちみつの中に含まれた「ボツリヌス菌」という菌が増えてしまい、毒素を作ってしまうことがあります。
適切な治療で回復しますが、命に関わることもある中毒ですので注意が必要です。
ボツリヌス菌とは
ボツリヌス菌ははちみつに限らず、ボツリヌス菌は海や川、湖や地面など、様々な場所に住んでいる菌です。
とても一般的な菌で、普段は悪さをしませんが、酸素が無い環境(嫌気性環境)になると、増殖して毒素をつくり始めます。
このボツリヌス菌がつくる毒素はとても強力な毒素で、地球上で最強の毒素とも言われます。
ほんの僅かな量で命に関わるため、たった1gもあれば1000万人の命を奪うことも可能とされています。
また、とても生命力の強い菌でもあります。
芽胞という殻をつくり、身を守るため、乾燥や冷凍でも死滅しませんし、アルコールや他の薬品も効きません。
加熱して殺菌するには120度以上で4分間加熱しなければなりません。
そのため、家庭の調理環境では死滅させることがとても難しい菌です。
野菜などの表面に住んでいることもありますので、水道水でよく洗い流すことが大切です。
このボツリヌス菌がつくった毒素による食中毒はからし蓮根やハヤシライスの具、グリーンオリーブの瓶詰めなど真空パック詰めされた食品などで報告されています。
参考:厚生労働省 真空パック詰食品(容器包装詰低酸性食品)のボツリヌス食中毒対策
ボツリヌス菌は加熱で死滅させることは出来ませんが、ボツリヌスの毒素は熱で壊れるため、加熱調理することで毒素を取り込んでしまうことを防ぐことは可能です。
はちみつの中に住んでいる状態では増えたり、毒素をつくったりすることはないので心配はいりません。
1歳以上になれば腸内環境が整うので、他の菌がこのボツリヌス菌が増えるのを防いでくれますので、心配いりませんが、1歳未満の乳児には与えないように必要です。
余談ですが、美容整形などでシワ取りなどに使われている「ボトックス注射」はこのボツリヌス毒素を生成したものを利用しています。
乳児ボツリヌス症の症状
症状は、便秘が数日間続き、全身の筋力低下、脱力状態、哺乳力の低下、泣き声が小さくなるなどします。
特に、顔面は無表情となり、頸部筋肉の弛緩により頭部を支えられなくなるといった症状を引き起こすことがあります。
ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに命を落とすこともあります。
国内では、保健所が食中毒として乳児ボツリヌス症を報告した事例が1986年以降に3例、医師が乳児ボツリヌス症として報告した事例が1999 年以降16 例あります。
また、欧米でも発生しており、米国では毎年100 例以上の発生報告があります。
乳児ボツリヌス症の主な発生原因は、はちみつが指摘されていますが、ハチミツを食べていない例といして井戸水も報告されています。
【参考】
・消費者庁 ハチミツによる乳児のボツリヌス症
・厚生労働省 ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。
成人腸管定着ボツリヌス症
成人腸管定着ボツリヌス症とは、1歳以上の腸内でボツリヌス菌が増えてしまう病気のことです。
基本的に微生物が増えた1歳以上でボツリヌス菌が増えることはありません。
しかし、1歳以上でも抗菌薬を長期間服薬するなどして腸内の環境が乱れたり、微生物の量が減るなどの状態に陥ることでボツリヌス菌が増えてしまうことがごく稀にあります。
日本でも今までで急性白血病治療中の5歳男児が発症した1例だけ報告されていますが、はちみつが原因かどうかは分からないようです。
基本的に起こることはない病気ですが、抗菌薬の長期服薬などをしている場合は注意が必要です。
グラヤノトキシンによる急性中毒
グラヤノトキシンという成分がはちみつに含まれている場合、急性中毒を起こす場合があります。
「グラヤノトキシン」とは、ツツジ科の植物が持つ毒素で、レンゲツツジ、ホンシャクナゲ、アセビ、ハナヒリノなどに含まれていることがわかっています。
このグラヤノトキシンによる急性中毒は主にトルコで報告されており、トルコの黒海沿岸部で自生するツツジ科の植物から集められたはちみつに「グラヤノトキシン」が大量に含まれていることが多いこともわかっています。
日本国内のはちみつでは報告はされていませんが、マレーシア産のはちみつによってグラヤノトキシンの急性中毒が報告されています。
【参考】
・食品安全委員会 ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)、意見書「トルコの黒海沿岸産のツツジ科植物由来ハチミツのグラヤノトキシンによる中毒」を公表
・症例報告 日本で発生した蜂蜜中毒の1例
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アーユルヴェーダでははちみつは加熱すると毒と考えられている
インドの伝統医学である「アーユルヴェーダ」でははちみつは加熱すると毒になると考えられています。
アーユルヴェーダでははちみつは非常に重要な役割を持っており、とても身体に良い食べ物だと考えられています。
しかし、そのはちみつは熱してしまうと毒になると言われています。
体温以上にあげてはだめだとか、紅茶くらいの温度なら問題ないなど、温度や時間は諸説あり、一定ではありませんが、熱することは避けるように指導を受けるようです。
実際に急性中毒を起こすような成分は加熱では発生しませんし、場合によっては加熱することで失われる毒素もありますので、それほど注意は必要ありません。
ただし、はちみつを加熱すると、AGEs(エージス)と呼ばれるタンパク質の糖化反応(メイラード反応)によってつくられる物質が増えます。
この物質は、身体の老化や動脈硬化に繋がるとも考えられているため、これを避けることには繋がりそうです。
AGEsは主に肉やバター、一部の野菜に含まれており、揚げる、ローストする、焼くなどの水を使わない調理法で大きく増加します。
まとめ
いかがでしたか?
今回ははちみつの中毒についてご紹介をしました。
特に注意が必要なのは乳児ボツリヌス症です。
1歳未満の乳児にははちみつは絶対に与えてはいけません。
健康で身体にいいはちみつですが、1歳を過ぎて腸内環境が整ってから与えるようにしましょう。