- 日本の農薬の規制は諸外国よりも緩い傾向にある
- はちみつは1歳以下の乳幼児に与えてはいけない
- はちみつと環境問題の繋がりはとても深い
皆さんは、毎年どれくらいのはちみつが生産されているかご存知ですか?
現在の全世界のはちみつ生産量は、合計して120万トン前後と推定されています。
そのうち、20万トン強が中国が占めていて、以下、旧ソ連諸国(ウクライナ、ベラルーシ、ロシアなど)、北米、ヨーロッパ諸国と続きます。
日本には様々な国からはちみつが輸入されていますが、はちみつのラベルに表示されている様々な国名を見て、「安全なはちみつってどんなもの?」と疑問を抱いたことがあると思います。
今日は、はちみつの安全性についてお話したいと思います。
目次
はちみつに関わる有害物質
まずは、はちみつに混入されている可能性の高い有害物質について簡単に説明します。
除草剤
日本でも人気のあるニュージーランドのマヌカハニーから、グリホサートという除草剤が検出されたという話は、はちみつを愛好する方ならば耳にしたことがあるでしょう。
グリホサートは、マヌカハニー以外ではクローバーなどの牧草系はちみつや、色々な花の蜜が含まれる百花はちみつから検出されています。
グリホサートは現在、人体への影響については見解が別れる除草剤ですが、フランス、ドイツ、オーストリア、チェコなどのEU諸国は国として使用の禁止を決めています。
また、タイやベトナムなどのアジア諸国の一部でも使用を規制する動きが見られます。
しかし、このように各国が規制に向かう中、残念ながら日本では2017年に残留基準値を6倍に引き上げ、その上グリホサートの出荷量は20年で3倍に伸びており、米国産の輸入小麦からも高い確率で検出されているというデータもあるようです。
この農薬の使用には賛否両論がありますが、生態系にどれほどの影響を及ぼすのかという世界的な研究調査の結果が待たれています。
ネオニコチノイド系農薬
ネオニコチノイド系農薬については、環境問題に興味のある方は一度は聞いたことがあると思います。
これは1990年代に登場し、現在世界でもっとも広く使われている殺虫農薬ですが、昨今のヨーロッパでのミツバチの大量死をきっかけに使用に規制がかけられ始めています。
ネオニコチノイド系農薬の特徴は、神経毒性、浸透性、残留性の3つです。
昆虫に対する強い神経毒は、ターゲットとなる害虫以外にも益虫にも被害を及ぼします。
このような特性が、ミツバチの大量死に関係があると言われる所以です。
この流れをくんで、この農薬は2000年前後の時期には、フランスでの規制に始まり、EU諸国、アメリカ、ブラジル、台湾、韓国も続いて使用禁止の動きが出ています。
しかし、このように各国では規制が進んでいますが、残念ながら日本ではこの種の農薬問題への認識が低くむしろ使用緩和の方向に向かっています。
長期的な毒性や、人を含む生態系への影響は現在殆どわかっていないので、この問題について私達消費者は今後注視していく必要があるでしょう。
抗生物質
ミツバチにも伝染病があり、抗生物質を使わなければいけない場面があります。
ミツバチの主な食料として、はちみつと花粉があり、はちみつはエネルギー源で花粉はミツバチの体を作るタンパク質と言われていますが、現在の養蜂では生産性を重視することから、抗生物質を餌である花粉と糖液に混ぜてミツバチに投与します。
このように投与された抗生物質は、ミツバチの体内に吸収され、病気の予防へと繋がるのです。
しかしこの投与を続けることで、ミツバチの病気を引き起こす病原菌の耐性が高まってしまい、より使用量を増やさなければならなくなるという悪循環も生じるようです。
抗生物質はミツバチの体内で代謝され、はちみつのには残留しにくいと言われていますが、万が一、はちみつに抗生物質が残留し、それを人が摂取すればいざという時に抗生物質が人体に効かなくなるというリスクが懸念されています。
はちみつを選ぶ際には、抗生物質不使用という表示のあるものをおすすめします。
放射性物質
近頃、アメリカ東部で採取されたはちみつから、放射性元素であるセシウム137が検出されたという論文が発表されました。
これは、ここ数十年の間に行われた核実験に起因すると考えられています。
ミツバチは、花の蜜をおよそ5倍に濃縮してはちみつを作るので、そのはちみつには植物が吸収した汚染物質も濃縮されているということになります。
これまでセシウムなどの半減期の長い放射性元素が、環境に及ぼす影響についての研究は、あまり行われてきませんでした。
しかし今後はこのような研究も進んでいくのかもしれません。
ちなみに、このはちみつは調査用に収集されたもので、汚染レベルも人体に害を与えるほど高くはないとのことです。
また、日本に輸入されるはちみつは放射能検査がされているので、この点は心配はありません。
ボツリヌス菌
ボツリヌス菌は、土壌をはじめとした自然界に多く存在している細菌です。
ボツリヌス食中毒は、食品内に混入したボツリヌス菌芽胞が嫌気状態の食品内で発芽、増殖し、それにより産生されたボツリヌス毒素を食品とともに摂取することにより発症します。
そこで、「はちみつには殺菌作用があるのではないか?」と思われた方も多いでしょう。
はちみつは、天然のままの非加熱状態で、強い糖の浸透圧による殺菌作用を持っています。
そのため、一般の細菌ははちみつの中では生きてゆくことができません。
しかし、丈夫な殻に覆われているボツリヌス菌の芽胞は、はちみつ内でも死滅ぜずに生き残ってしまいます。
その芽胞が、人の口に入ると腸内でボツリヌス菌が増殖し、菌が毒素を放出し中毒を引き起こすのです。
1歳をすぎれば腸内の免疫系細菌のバランスが整い、毒素を解毒してくれるのですが、1歳以下の乳幼児は腸内細菌の免疫系統が未発達なため、中毒を起こしてしまいます。
尚、ボツリヌス菌芽胞は熱にも強いため、加熱したはちみつも乳幼児には与えてはいけません。
まとめ
いかがでしたか?
今世紀に入ってからの研究では、世界のはちみつのおよそ75%から何らかの農薬が検出されているという発表がされています。
さらに、オーガニックと非オーガニックのはちみつを比べても、大きな差は見られなかったという研究データもあるようです。
しかし、現在世界で産出されているはちみつの農薬残留濃度は、欧米の最大残留基準に照らし合わせても、人の健康には害のない程度と言われています。
これを機にはちみつを通して環境問題に思いを巡らせてみてもいいかもしれませんね。